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デンタルIQを高める要因は?

2021/05/12
コラム

前回のコラムでは、デンタルIQというものが歯や口のことについての知識や健康に対する意識の高さを表しており、小児期の生育環境や教育、そしてネガティブな自己体験により形成されるものであるというお話をしました。今回は、それぞれの要因について掘り下げて考えてみたいと思います。

 

1. 小児期の生育環境や教育

これは体の健康についても同じことが言えると思いますが、健康な若者が、歯のトラブルで困ることはほとんどありません。また、ちょうど子育て世代のご両親であっても、まだご自身の歯や口のトラブルが多発する年代ではありませんので、本気でわが子のデンタルIQを高めてやらねば、なんて考えることはほとんどないでしょう。また、そのコンテンツについても、わが国の義務教育に含まれているわけではなく、自己体験にも乏しい時点で、デンタルIQを高めることの優先順位が下がってしまうのも仕方のないことです。

 

例えば、歯科先進国である北欧では、子供のうちに徹底的に食生活や歯みがき習慣に対する意識を付けさせるのです。その他、フッ素やシーラント、キシリトールといった虫歯予防に効果的なケアを教えます。子供の虫歯は親の責任という考え方が根強く、成人するまでは治療費も全額補助されますが、成人以降は自己負担です。教育を受けてから成人以降の虫歯はすべて自己責任というわけです。また、北欧では虫歯などの予防を目的とした検診を受けるために歯医者さんに通うのが一般的で、検診を受けているかどうかで治療費用が違う(検診を受けずに治療が必要になったら、治療費が高くなる)国もあります。虫歯になったからと歯科医院に行く日本人とは、予防に対する考えが大きく異なります。

 

2. ネガティブな自己体験

「歯が痛くて、一晩眠れなかった」なんて経験をされた方もあるかもしれません。また、歯が抜けてしまい、歯科医からインプラント治療を提案されたが、その見積額をみてびっくりしたという方もいるでしょう。ネガティブな体験には、①身体的な苦痛を伴うものと、②治療費や治療を受けるのにかかる経済的・時間的負担を伴うものに大別されます。歯や口に問題がなく、普段から予防を心がけていれば生じなかった(もちろんゼロとは言えませんが)問題も、ある日突然やってきます。傾向としては、特に働き盛りの男性に多く、痛みや不便さによくもここまで我慢できるものかと感心させられることもあります。このような身体的苦痛に直面した方は、ため息混じりに、しかしみなさん一様におっしゃるのです。「あぁ、若い頃からもっとしっかり治療や検診を受けていればよかったのになぁ・・・」と。この後悔を感じる瞬間に、デンタルIQが急上昇しているはずです。それまで治療や検診を軽視していた方が、突然にして「どうか治療してください、検診にも通いますので」と自ら懇願するようになるのですから。実際に、デンタルIQを高めるには、このネガティブな体験をすることがもっとも近道だと思います。経験せずに済むなら、しないに越したことはないのでしょうが。

 

雑誌「President」の過去記事からの引用になりますが、人生の振り返りに関するアンケート(健康編)では、「歯の検診を受けていればよかった」と後悔する回答者(5574歳の男女1060人)が最多だったということです。予防が大事なのは薄々気づいていたけれど、実際歯のトラブルが起こって初めて事の重大さに気づいた、などという悲劇が残念ながら繰り返されてしまっているのです。この声がもっと若者世代にも届いてほしいと願うばかりです。

 

次回は、日本人のデンタルIQがなぜ先進国の中で低いままなのかを考えてみたいと思います。