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日本人のデンタルIQはなぜ低いのか?−②安価な治療費による価値低下−

2021/05/12
コラム

今回は、先のコラムでもご紹介した「時間割引による先送り」と関連する内容です。遠い未来に起きる不都合な事象の価値やインパクトを過小評価してしまう「時間割引」により、まるで夏休みの宿題を先送りするかのごとく予防をおろそかにしてしまい、いざ治療が必要な状態になり、健康が失われたその時、ある問題に直面するのです。

 

ここで直面する問題とは、健康が損なわれたことに対する精神的なショックと、その治療にかかる費用です。大変おもしろいことに、この費用というのが国により大きく違うのです。概ね、治療費が高いほど、なるべく治療を受けなくてよいようにと予防に対するインセンティブが働きやすくなっています。国ごとの制度・事情が異なるため、単純な比較は難しいものの、予防に対するモチベーション、歯の治療に対する価値観すら変えてしまうほどに治療費の相場が異なるのです。

 

国民皆保険制度のある日本における歯科治療費は、物価等を考慮したとしても諸外国のおよそ510分の1程度です。あえて批判を覚悟で言うと、適正な価格からはかなり乖離していると言わざるを得ない状況です。これは、医療従事者の多くが感じていることだと思います。しかも、保険証さえ持参すれば、さらに自己負担額は最大3割(つまり70%引き)です。日本の医療事情はまさに昨今のコロナ対応でも露呈したように薄利多売で成り立っており、受けられる医療サービスに対して治療費が安価であると世界では有名です。実際、当院でも海外からの医療ツーリズムや、海外在留邦人も治療は日本に帰国した時にまとめて受けるという事例は多数あります(旅費を含めてもなお治療費が安いからという理由で来られるのですが、日本の制度にタダ乗りし、なんだか技術を搾取されているようで虚しい気持ちになります)。治療費が安価であることは、国民の誰もが垣根なく治療を受けられるという点で大きなメリットもあるのですが、安価で治療を受けられてしまうがゆえに予防への意欲を削いでしまうという負の側面もあるのです。何事にも適正な価格というものがあるということでしょう。

 

ただ、制度は制度であり、そこには良い点も悪い点も含まれていて、それはどこの国でも同じことです。私たちができるのは、現行の制度の中で最善を尽くすことであり、わが国の場合、国が予防へと舵を切ろうとしている今、その後押しができるよう啓発を行うことが大切ではないかと考えています。

 

デンタルIQについてのコラムは、これにて終了です。